あなたにもわかる相対性理論　　　　　茂木健一郎　　　　PHP　　　　　

タイトルから受ける印象は相対性理論の一般向け入門書といったところだが、もちろん分かり易く相対性理論とは何かを本書で知ることはできるしすでに相対性理論をある程度学んだ人たちにとっては簡単な復習ノートとして参考になるのではないかと思える内容であることは間違いないが、本書で著者がもっとも言いたかったことは、著者が科学者としてその考え方、生き方などあらゆる面において最も尊敬し憧れるアインシュタインについて何故、そうまでその思考方法や思想が優れていると思うかを書いた、いわばアインシュタインファンブック的な部分ではないだろうか。

相対性理論はアインシュタインが唱えなくてもいずれ誰かが唱えるようになっただろうという一般に言われることもあるが、著者は相対性理論はアインシュタインだから発想しえた理論であり、彼が発表したからこそ科学理論のみならず人々の思想すら大変革させてしまう程のインパクトを持ちえたのだと主張する。

又、アインシュタインは、相対性理論を発表し、しかも量子力学の基礎に多大な影響を与えるといった超人的な業績を残しながらも、彼自身は、最終的に量子力学の理論を「美しくない」という理由で受け入れなかったのは一体彼のどのような思想に基づくものなのかを著者は「アインシュタイン力」という言い回しで詳細に分析している。

アインシュタイン力とは何物にも捕えられない自由な発想力であり、粘り強く考え抜く力であり、又ユーモア力といった10のポイントだというのだが、本書はそのアインシュタイン力とは何かという説明と、相対性理論のいろはを並行的に解説するという中々読みやすい作りになっている。

更には、完結にまとめられた相対性理論を核とした近代物理学史も楽しめる中々お得な新書だ。