かあちゃん　　　　　　重松清　　　　　　　　講談社　　　　　　　　　

いつもの重松ワールド作品ともいえるがここのところ続いていた父と子をテーマにした物から今度は一転して母と子がテーマになっている。

もちろん彼の得意とする子供の成長物語がこの物語の一つの核になってはいるが、それと平行して「母」そして「子から見た母」の物語が重ねられておりいつもの重松ワールドらしく感動的な作品となっている。

この作品は、月刊誌に連載されていたらしく、一章が一回連載分の読み切り形式になってはいるが、それぞれの章が続物のような形になっており、全8章で一つの物語を成すという、これまたよく重松作品で使われる手法が駆使されている。

そういう面では、いかにも書きなれたプロの作家ならではの手慣れた手法といえるだろうし、物語全体も、破綻の無いよくまとまった作品になってはいる。ただその分、作者の作品を読みなれた読者たちは、いささかマンネリを感じるかもしれない。

正直言って、こちら側の体調もあったのかもしれないが、この作品の読後感としてはプロの小説家の手慣れた仕事といった臭いを感じないではなかった。

もちろん、母と子、少年少女の精神的成長、そして大人社会への入口で悩む彼ら、贖罪とはどういうものなのか、あるいは重松流教育論等々、これだけ多くのテーマを無難に書きこなすこの作家の力量は中々のものであることは大いに感じはしたが。

(09年5月発行)