進化の存在証明　　　　　リチャード・ドーキンス　　　　　　　早川書房　　　　

神が7日間で天地を創造した、アダムとイブの二人が人類の祖先である、現在地球上にいる生物全てはノアの箱舟に乗せられた動物たちの子孫である、といったキリスト教聖書に書かれた創世神話を信じ、ダーウィンの唱えた進化論を否定する人たちがアメリカの人口の42％ にも達するし、イスラムの国トルコでも進化論を正しいとする人はいまだに30％だという。

80％以上の人が進化論を正しいと考えているといわれる日本からみればキリスト教やイスラム教といったいわば原始宗教の教義を未だに一字一句頑迷に主張する狂信者を相手にするのでさえ時間の無駄に思えてくるし、普通は「そんなバカは放っておけ！」「バカを相手にするな！」で済ませてしまうところだが、生物学者ドーキンスにとってはとても放っておけないどころか、こういった創造論者は怒りの対象になるようだ。

ケンタッキー州には「創造博物館」という進化論否定の博物館があって6500万年前に絶滅した恐竜とわずか数十万年前に出現した人類が同時代に生存していたという展示をしているし、こういった狂信者達は度々公立学校の授業で進化論を教えることを禁じようという様々な妨害工作を行っているという実害を目の前にすれば、確かに、ドーキンスがここまで執拗に進化論否定論者たちの愚にも付かない議論を潰しにかからなければならないと使命感に燃える気持ちもわからないではない。

本書で展開される「進化は事実である」というドーキンスの証拠提示、理論は小気味よいし、進化論否定論者に対する容赦のない攻撃は小気味よい。

又、進化論を今一度細かいところまで理解しようという読者達にとっても本書でドーキンスが展開する進化論講義は理詰めで徹底しているだけにおおいに参考になるだろう。

ドーキンスは「ダーウィンのブルドッグ」とまでいわれた進化論支持学者であったハクスレーの現代版といってよいと思う。

しかし、水も漏らさぬこのドーキンスの論駁がいくら徹底的になされても創造論者達は意見を変えることはないだろうし、英国でも創造論者（狂信者か、バカと言ってよいような連中）が増えつつあることは残念ながら止めようがないだろう。

（09年11月発行）