定年バックパッカー読本　　　　大嶋まさひろ　　　　集英社　　　　　

旅行ガイドブックは多いが、ターゲット層が絞られていないいわゆる一般読者向けに書かれたガイドブックとなると、余りに網羅的でありすぎて実際に自分が旅行の計画を立てる際には余り役に立たないということが多い。

結局はその手のガイドブックはざっと見て旅気分を味わうだけで終わってしまうものが多いのだが、本書のように、団塊世代に生まれ既に定年に達した男性、あるいは定年時期にさしかかっており定年後の余暇をどうして過ごそうかと思っている人向けといった正に自分の属する世代をどんぴしゃりのターゲット層にして書かれたガイドブックとなると食指は動く。

著者自身、団塊世代であり若いころは「バックパッカー」として世界を貧乏旅行して回ったという。定年時期を前にして再びバックパッカー旅行に目覚め、同世代である団塊時代世代男性に「定年バックパッカーになって世界を旅しよう！」と呼びかけたガイドブック、旅指南書が本書である。

「バックパック」を背負っての一人旅となると、もちろんお仕着せの団体パック旅行とは全く違った、旅本来の自由さが楽しめると同時に、本来旅という行為の持つスリルとか不安も味わえることは確かだが、著者は定年になったらもう一度若い頃体験したあの旅の自由とドキドキ感を味わおうと呼びかける。

もちろん著者は若い時代のような体力任せ、度胸任せの旅ではなく、中高年世代の身の丈にあった適度に体力、度胸を必要とする（従って、適度にスリリングな？）旅を推奨する。

旅の準備（なるべく安上がりに旅を続けることが重要だとか）から、旅の過ごし方（街歩きの仕方、滞在地での自由時間の過ごし方から、毎朝いかに快適にウンコをするかといったことまで、確かに自分をターゲットに書かれていると思えば読んでいるだけでなんだか楽しくなってくる。

もっとも、実際に自分がこういったバックパック旅行をいつかするだろうかと考えると、とてもとても、と思ってしまうのは若いころからバックパック旅行をしてみようというほどの勇気がなかった性格のままこの歳を迎えているからだろうか。

(07年8月発行)