海の波を見る　　　　　光易恒　　　　　　　岩波新書　　　　　　　　　

海辺に打ち寄せる波の音だけを集めたCDが意外と売れていると聞いたことがある。

波の音は、母親の胎内にいた時に聞いた羊水の海の音と似ているから人は波の音に安らぎを覚えるのだとも言われていたが――――。

一茶の「春の海、ひねもすのたりのたりかな」の句もそうだが、海の波を見て波の音を聞いているとリラックスした気分になれるのも、やはり波は我々人間の原始本能に訴える何か不思議な魅力を持っている所為ではないかとも思う。

海洋学者である著者は、長年海洋波を研究し多くの学術研究論文などを著された方だが、本書はそういった長年の物理学（波動理論）研究の中で撮り溜めた海の波の写真の中から、著者自身の「波フリーク」という立場から見て「美しい」と思った波の写真を集めたものだ。

波の誕生から成長、そして消滅迄、あるいはさざ波からうねり、そして暴風波迄、あるいは三角波や不思議な波迄、実に様々な波の写真はCDで波音を聞くように、眺めているだけでも何だか心が澄んでいくような気がする。