これでよろしくて？　　　　川上弘美　　　　　　中央公論　　　　　　

川上弘美の他の作品がもつ独特のシュールさがこの作品ではやや薄れているが、それでもやはりこの作家らしいちょっとシュールでアンニュイな雰囲気は心地よい。

30代後半の専業主婦である主人公、昔の同僚と会った時に自分は既に世の中の本流からは少しズレてしまったのではないかという焦燥感に駆られることもあるという普通の女性でもある。

彼女は、愛する夫と二人で平和な日々を送っているのだが、なんとはない焦燥感のようなものを感じているのだが、ある日「これでよろしくて？　同好会」という女性の集まりに勧誘され参加することに。

この会は毎回どうということもないテーマ、例えば「息子の部屋を訪れたら息子ではなく彼の友人がいて、見知らぬ女の子と寝ていた場合、どうすればいいか」といった雑多な問題を語り合うという一風変わった会だ。

そんな中、主人公の主婦としての平凡な日常が、家を飛び出してきた姑との長期に亘る同居による居心地の悪さ、そして迷惑に思いながらも母に直言できない夫、最初は遠慮していたのに徐々にこの家の実権を握りはじめた姑に対する違和感といった非日常的な出来事によって微妙に変化していく。

「これでよろしくて？　同好会」での話し合いと、主人公のかき乱されていく平凡な日々とが相互に関連しながらこの一見風変わりな物語が展開していく。

状況設定、物語展開ともに既に大家と言われつつある作者の手堅さでぐいぐいと読ませる。

おそらく、主人公と同年代の女性達には大いに共感されるのではなからおうか。