眼を見なさい！　　　　J･E・ロビンソン　　　　東京書籍

アスペルガー症候群といわれる疾患が知られるようになったのは近年のことである。

著者は幼いころから落ち着きのない子、人付き合いの悪い子と人々から疎んじられてきて学校も途中で止めてしまうなどのアスペルガー特有の症状を持っていたのだが、回りはそれをこの症状特有の反応であることを知らず、又、彼自身も自分のそういった性向を全く理解していなかった。

しかし彼にはこれまたアスペルガー特有の一般人には中々ない特殊な才能があった。

彼は一時ロック・バンドKISSと行動を共にし彼らの火を噴く楽器を開発、あるいはごく初期のコンピューターゲーム開発エンジニアとして活躍してもいるなど機械に関する特異な才能をもっていた。

しかし、こういった才能は彼をIT企業の経営幹部に昇進させていくのだが、経営という人と関わる仕事になると、アスペルガー特有の症状は彼と彼が交わろうとする他者とのコミュニケーションにとっての障害となって立ちはだかってきたのだ。

著者が自分はアスペルガーであることを知ったのは40歳になってからのことである。

そういったアスペルガー症候群者自身の半生を綴った本書は、自分自身、あるいは自分の身内にその症状を持った人たちにとってこの未知の症状に対する理解を大いに深める手段となるだろう。