フリーター、家を買う。　　　　　有川浩　　　　　　幻冬舎　

主人公誠治は24歳、新卒で就職した企業のキチガイじみた新人研修に嫌気がさし、三ヶ月で退職しフリーターを続けながら親元でだらだらと暮らしてきた。

しかし、ある日母親が20年前からご近所のいじめのターゲットになっておりワンマンの夫とフリーターでぶらぶらしている息子、それに自分を支えてくれていた娘が嫁いでしまったことなどが重なり重度のうつ病になっていることを知る。

母親はついには自殺未遂まで起こすが、父はそれでも自分勝手で妻に対する思いやりを見せないという状況に、誠治は今までの自分のいい加減さを悔やみ、母を回復させ、昔のように明るい家族を取り戻すために自分がしっかりしなければいけないという自覚にめざめる。

きつい肉体労働のアルバイト現場で働きながら就職活動をはじめ貯金もはじめ、父親との関係の修復も図って―――。

一種の青春成長物語ではあるが、ある程度著者自身の体験的なものもあるからだろうか、又、世の中に就職機会を閉ざされてフリーターに甘んじている若者たちが多いという現実があるからだろうか、中々身に詰まされる物語でありまた痛快な物語でもある。

「諦めないで！　未だ間に合う！」というこの物語のメッセージは若者だけではなく万人の心に響くことだろう。