人生一般ニ相対論　　　　　須藤靖　　　　　東大出版会　

東大教授で専門は一般相対性理論、ダークエネルギー研究というなかなかいかめしい肩書きを持つ著者によるエッセー集であるが、そのかなりお堅い肩書きとはうらはらに話題は極めて豊富、かつユニークでありとっつき易い。

どちらかというと最近流行りのいわゆる「エッセイスト」的な話題も多いが、そこに適度に著者の専門分野である宇宙論、相対性理論のエッセンスや、日本の物理研究や理系教育に関する疑問や提言、あるいは人生論などがちりばめられている。

文章そのものは多少受け狙いすぎるのではないかと思われる「臭さ」も感じられるし、ジョーク、ユーモアの類も、ちょっと悪ふざけが過ぎるような気がしないではないが、その話題性の豊富さ、物理学という中々興味深い分野にまたがる題材が多いだけに面白く読める。

脱線に次ぐ脱線といったエッセーだが、泉麻人のようなユニークな世相論、世代論は笑いながら思わず納得してしまう部分も多い。

40代の女性にピンクレディーの「UFO」を聴かせると、皆完璧にあの振り付け付で踊り出すという話や、日本天文学会の正会員数の方が、日本哲学会の会員数よりも少ない等々、「へーぇー」と思うような話題も含めて本書がちょっと価格的に高い（ページ数の割りには）本であるにもかかわらず、それほど損したという気分にはならない。

（それにしても、このボリュームでこの価格というのは東大出版会というところの権威（？）の為せる業なのだろうか）