結婚しなくていいですか　　　　益田ミリ　　　　幻冬舎　

「香山リカ先生号泣！」というオビにひかれて読んでみたコミック。

35歳独身のスーちゃんの仕事はカフェの店長。若いバイトの娘たちを使う「自立した女性」の典型ともいえる。

貯金は200万円、そろそろ一人で生きていく覚悟を決めなければいけないと思いつつも、最近セックスもしていない自分の人生はこのままでよいのだろうかとふっと不安に思うこともある。

そんなスーちゃんとかつての職場仲間、おなじくもうすぐ40歳になり経理事務員としててきぱき仕事をこなす独身のさわ子さんの日常を題材にしたいわゆる脱力系のコミックが本書だ。

最近多くなってきている独身女性たちのなんとも微妙な心理を巧みに描いていてちょっとジンとくるところもある作品だ。

スーちゃん、さわ子さんだけではなく彼女たちと同年代、既婚、子供ありの友人たちも登場、彼女達もまた今の自分のこういった生活は、本当に自分が望んだ人生なのかと、ふっと自問自答するといったエピソードにも中年にかかろうとしている女性たちの微妙な心理を描いて見事だ。

さわ子さんは認知症のおばあちゃんとお母さんの女3人暮らし。この先、自分はおばあちゃんやお母さんのようになっていくのだろうという漠然たる不安を持ちつつ、一方ではそれも悪くないと思ってもいる。

そんな彼女がお付き合いをはじめた男性は、一点非の打ち所がないタイプだったのだが、婚約を間じかにしてその男性から「親から言われているので悪いけれど子供が産めるという診断書を貰ってくれる」と言われ「やっぱり、この人やめておこう」と思うエピソードなど、女性でなくてもその時のさわ子さんの気持ちがなんだか痛いように分かる気がした。

アラフォーの独身女性たちはこういう悩みを持っているのかと何だかしんみりした気持ちにもなる。