四十九日のレセピ　　　　　井吹有喜　　　　　ポプラ社　

百合子は5歳の時、父のその許婚の乙美と3人で動物園に行った。

「新しいお母さん」だと乙美を紹介された百合子は、乙美が作ってきた弁当の重箱を「いらない！」と払い落としてしまった。

それから33年、乙美は子供を産まないまま71歳で急逝してしまった。

百合子は今、夫の母を介護しているが夫婦には子供がない。

その夫は浮気相手の女性が妊娠したことを知り家に寄り付かなくなったことで百合子は家を出る決心をして乙美亡き後の実家に帰ってきた。

百合子の父、良平もまた最期に妻と交わした言葉が、彼女のミスを怒鳴り散らしたことだったことに後悔しているが、乙美を失って生活の気力を失っている。

そんな彼等の家に髪を染め真っ黒に日焼けした若い女性が、乙美から四十九日間、家の面倒を見るように頼まれたといって転がり込んでくる。

「自分のもっとも大切な人を、大切にしなければいけない」というテーマが乙美という一人の平凡な生涯を終えた女性の知られざる半生と、その女性を失った家族の物語として展開していくちょっと感動的な物語だ。

但し、テーマの設定もプロットも比較的よくできているとは思うが、正直言って「ちょっとくさい」ところも少なくない。

ストーリーをちょっとわざとらしく盛り上げ過ぎているとこも目立つし、無理やりストーリーの辻褄合わせに走る展開も気になる。

この作家、まだ随分と素人っぽい部分が多すぎるようにおもえるのだが。