幕末維新に学ぶ現在　　　　　山内昌之　　　　　中央公論新社　

イスラム関連の歴史を中心としながらも多方面に於ける碩学として様々な評論をこなす著者による幕末維新期の人物評伝。

新聞に週一回のペースで歴史人物コラムとして書かれた内容を一冊に纏めた物ということらしく、一人の人物が概ね3ページほどで纏められ、それぞれに著者の視点からみた評価が書かれている。

50人余りの人物がとりあげられているが、そのバラエティーは多彩で維新の功労者、明治日本を形作った人物、政治のみならず経済人、言論人、悪役として名高い清河八郎、世良修蔵などまでカバーしており、著者の碩学振りにはおどろかされるが、歴史薀蓄物としても楽しめる。

当然こういった多彩な人物像を見ていると、現代日本のあらゆる分野においての人物の乏しさに目が行く。

革命期というのは良きにつけ悪しきにつけ実に多彩な人物を排出する土壌を提供するようだ。

平和で安寧な現代が人物を生まないのは喜ぶべきことなのかもしれない。