世界史をつくった海賊　　　　　竹田いさみ　　　　ちくま書房　　

エリザベス一世の時代、ヨーロッパ辺境の弱小国であった英国が世界の強国に躍り出た最大の原因は、スペインやポルトガルの財宝の強奪、すなわち海賊がもたらした莫大な富によるものだった。

スペイン無敵艦隊を打ち破った英雄としてナイトの称号を得たフランシス・ドレークなどがその海賊の代表例だが、彼等の海賊としての活動には女王を筆頭にした投資シンジケートがあり、海賊はいわば国家的な強盗ビジネスとして成立していたという。

国が海賊を支援し、海賊は、その資金や情報網を利用することによって一回の航海で当時の英国の国家財政の数倍にも亘る配当をもたらしていた。

国家事業として行われていた海賊行為だからこそ、今でも英国（あるいはその影響を受けている米国）などではディズニー映画「パイレーツ　オブ　カリビアン」で描かれるように「海賊=ヒーロー」という図式が成り立ちうるのだという。

新書1冊の中に、こういった海賊の歴史、海賊と英国王室の関係、海賊を中心とした当時の世界貿易の実態といった情報をはじめ、「海賊は何を食べていたのか」とか、「スペイン無敵艦隊の敗因は何か」といった海賊あるいは英国史の薀蓄が詰め込まれており、実にお得感のある一冊になっている。