不思議なキリスト教　　　橋爪大三郎x大澤真幸　　　講談社　　　　

ミッション系の中学に通いその学校の寮に入っていた。寮の舎監は教師兼修道士だったし週一回｢公教要理｣というキリスト教の教科書のようなものを勉強する時間があったりしたので否が応でもキリスト教の教義に触れる機会があった。

しかし、あの時公教要理で教えられたキリスト教の教義なるものは、なんとも分かり難いというか、小学校を出たばかりの13歳の子供にも、「バカバカしい」と思えるようなものばかりだった。

天地創造のような恐らく大半のキリスト教徒でさえ信じていないことがらならともかく、マリアの処女懐胎や、イエスの復活やらの場合、これには「疑いを持ってはいけない」などといわれるのだからまともに付き合う気がしなかった。

仏教にも｢釈迦は母が10年10ヶ月の妊娠期間の後に生まれた」などという話があるが仏教は「それを信じなければ仏教徒ではないから天国へ行けない｣などというむちゃくちゃな論理はない―――。

キリスト教にはそんな「辻褄の合わない」ところが幾つもあるけれど、それを無理やり信じる為には、あの手この手の解釈が必要である。

本書は二人の社会学者によるそんなキリスト教の矛盾点がどのように辻褄合わせされているかという解説書というところだが、「訳の分からない部分を、どうにか分かるように理解するにはこういう論理が使われている」といった解説に終始するためにか、どうも著者二人も最終的には訳がわからなくなってきているような気がする。まさにミイラ取りがミイラになったようなものだろうか。

又、特に橋爪大三郎氏の、自身満々の断定調が鼻につくし、彼の解釈には随分と杜撰さも目立つ。

ただキリスト教の訳のわからなさを「一神教を理解する」「イエス・キリストとは何か」「いかに『西洋』を作ったか」の三章に亘り細かく項目を挙げて、どうにか理解しようとする努力は大いに買いたいと思う。(成果が挙がっているとはいいがたいが）

イスラエルを何度か訪れ、ナザレやベツレヘム、ガリラヤ湖などのキリスト教の「聖地」に行ったことがあるが、その時、確かにイエスという人間は2000年前にここにいて死んだのだろうなぁ〜という実感を持った。多分、イエスは一新興宗教の教祖だったのだろうが、その新興宗教が奇跡的に2000年間の間、世界を支配する宗教になったということなのだろうと思ったものだったが―――。この点では本書の見解には賛同する。