心理学とは何なのか　　　　　　永田良昭　　　　中公新書　　　

論理学、社会学、心理学といった文系の学問のいくつかは未だもって「どんな学問なのか」「一体、何を研究している学問なのか」がどうもピンと来ない学問がある。（蓮舫さんだったら「一体、何の役にたつのですか！」などと仕分けそうな）

そんな訳で心理学界の重鎮による「心理学とは一体、何をやろうとしている学問なのか」をまとめた本書には大いに興味をひかれ手にとってみた。

読了して「なるほど心理学とはこういう学問だったのか」とすっきりと分かった訳ではないが、心理学とは実に茫洋とした拡がる雲のようなものを研究しようという学問であり確かに簡潔に「心理学とはこういうものだ！」などと簡単に言い表すことのできない学問なのだという認識は得られた。

著者の広い識見を駆使してここに掲げられる心理学として研究されてきた事柄の幅は実に広くアットランダムとさえ思えるものだ。

「愛」の本質の研究の例としてアカゲザルに針金で作った代理母を与えた実験や、「アヴェロンの野生児」の話が出てきたかと思えば、「こころ」の研究では最後の野生インディアンが出てくるし、更にはフロイトの夢判断が出てくる。

その他、環境が人間の心理形成に与える影響があるかと思えば、「認知」、「意味」といった物の実体に迫る研究の方法、心理学と社会学の学際問題等々、その広がりはスリリングで興味深いし面白いが、さてそれではあらためて「心理学とは何なのか」となると、どうもさっぱり分からなくなってしまった。

蓮舫さんなら心理学を何と評価するだろうか。