我が家の問題　　　　 　奥田英朗　　　　　集英社　　　　　　　　　

「時間ですよ」などの昭和のテレビドラマ、毎回、きまった家族が茶の間に集まって食事をしながら話をして、別にどうというほどの事件ではないが恋愛だとか、進学問題だとかのちょっとした問題の泣き笑いがあって―――といったドラマで、翌朝にはそのあらかたを忘れてしまうようなものだったが――――それでも、いまでも何となく、ああいうドラマの方が、現代のドラマのように泣いたりわめいたりの大騒ぎドラマよりもよかったような気もする――――。

本書に収められた6つの物語も、かつての昭和ドラマのようなどこの家庭にでもありそうな（他人からみればどうでもよいような）出来事を物語にしているが、なんだかどれもちょっとした共感を覚えるような読後感が爽やかな物語ばかりだ。

ある日、堤防沿いの夜道を歩いて帰ってきた夫が「UFOを見たと」言い出した。しかも、そのUFOに乗っている「エムエム星雲からやって来たコピー星人」と対話をしているとまで言い出す。

呆気にとられる妻は、徐々に夫が職場での軋轢から心身とも疲れきっていることを知り、夫の救出の為に全身レオタードを着てエムエム星人となって夜の堤防にかけつける―――「夫とUFO」

両親が離婚するらしいと気付いてしまった高校3年生の娘を描いた「絵理のエープリル」、長い独身一人暮らしから一転、甲斐甲斐しすぎるほど完璧な妻との新婚生活から帰宅恐怖症になってしまう夫と、完璧であろうとすればするほど夫に避けられてしまうに新妻をえがいた「甘い生活？」――など、いずれもどこの家庭にもありそうな当人たちにとっては一大事であっても、他人にとっては結構ありふれた事件を描いて、なんとも爽やかな短編集だ。