日本人の誇り　　　　　藤原正彦　　　　　　文芸春秋　

世界価値観調査によると「自分の国を誇りにおもう」と答えた18歳以上の男女の比率は日本が世界で最低だったという。

自国を卑下する国民性は、アメリカ軍によって押し付けられた憲法、そして全ての日本的な物を否定する教育をおこなってきた戦後左翼勢力などによって日本人がその誇りを失わされた結果だと著者はいう。

なぜこのようなことになってしまったのか。著者は日本の教科書が、子供たちに正しい歴史を教えてこなかったことをまず挙げる。

日本の教科書検定には「近隣諸国条項」というものがある。検定に際して歴史的事実よりも「中国、韓国を怒らせないこと」を優先すべしという条項だ。

中韓のご機嫌に沿って書かれた教科書で歴史を学んだ子供たちに「日本という国を誇りに思え」といっても無理な相談だ。自分の国を誇りに思えない国民は、道徳的にも退廃し、個人の欲望にのみ感心を持つ。今や、日本人はかつての勤勉さや、弱い者に対する慈しみの気持ちさえ失っている。

歴史の専門家ではない著者だが、こういった歴史教育の現状にがまんがならない！とばかり著したのが本書で、いまでも似非左翼からは「右翼反動」といった非難もあるような内容だが、心ある人たちからすれば「よくぞ言ってくれた」という賞賛もあることだろう。

なんでもかんでも日本を賞賛するという主張ではなく、この震災から立ち直るべく日本人がもう一度、その誇りを取り戻す為の処方箋といった内容は、一読の価値がある。

(11年4月発行)