4％の宇宙　　　　リチャード・パネク　 　　　ソフトバンク　　

今年（2011年）のノーベル物理学賞は、「宇宙が加速膨張している」ことを突き止めた3人の科学者に与えられたこともあって、その加速膨張の原動力である宇宙斥力、ダークエネルギーに関する科学番組、記事の数が夥しいが、本書はそんな中の1冊だ。

加速膨張は、数十億光年かなたで輝く超新星爆発の光を観測することによって確認されたのだが、より遠くの超新星爆発を発見する研究はオーストラリアと米国の二つのチームによる熾烈な競争によって成し遂げられたといえる。

本書ではその科学界における熾烈な競争の経緯をドキュメンタリータッチで描くなかでこの世紀の発見に至る宇宙論の歴史、そしてその研究に携わってきた多くの科学者たちの人間模様を描いたもので、一流のサイエンスライターの作品だけに分かり易く、しかもドキュメンタリータッチの迫力に満ちている。ある意味ではコペルニクス、ガリレオから現代宇宙論までの宇宙研究の歴史のおさらいという構成にもなっている。

又、現代の宇宙物理学、素粒子物理学がいかに大掛かりな規模になっているかについての詳細な言及にはあらためて驚かされる。

今や、宇宙研究は、かつてガリレオやニュートン、アインシュタインが行った個人の努力・能力を基本とした研究とはまったく違うレベルのものになっており、研究を進めるためには莫大な費用と、大部隊の研究者を必要とするだけにある意味、巨大ビジネスでもあるという一面があることが浮かび上がってくる。

そんな研究の成果に与えられるノーベル賞の受賞者を巡る科学者同士のつばぜり合いといったヒューマンドキュメントも実に興味深い。

宇宙研究が実はいかに人間臭い環境の中で行われているか−−−あんまり知りたくはなかった一面ということも言えるが−−−。