やきもの鑑定五十年　　　　　中島誠之助　　　　　小学館　　

骨董に興味が全くといってよいほどないが、骨董品の鑑定番組である「開運なんでも鑑定団」はけっこうよく見ている。

あの「開運なんでも鑑定団」の一番の面白さは、貴重なお宝が出品される部分ではなく、所有者本人が自信をもって高値をつけている自慢の骨董品が、真っ赤な偽物、二束三文のガラクタと分かった時の、あのがっかりした顔が気の毒を通り越して笑えるところにあるように思うが−−−どうだろうか。（他人の不幸は鴨の味ということだろうか）

経済学的に見ると骨董品の価値とはなんとも理解しがたいところがある。

まあ、きれい事で言えば、骨董品にある「美術的価値」が、数百万、数千万といった価格で表されるのだということになるだろうが、そんな美術的価値に無頓着なものにとっては、「たかが」湯のみ一つ、皿一枚に数十万、数百万の価格がつくことじしん正気の沙汰とは思えないのだが−−−。

骨董価値とは結局のところ「交換価値」すなわち100万円といわれる皿を買っておけば、いつかそれが200万で売れるかもしれない−−−という価値なのではないだろうかとも考える。（ゴッホの絵が何十億円というのにしても、いかに凄い美術品だからといって美術品価値がそんなになるわけがない。いずれこれが更に利益を生むだろうという交換価値がそんなとんでもない価格をつけさせているに過ぎないのでは−−−）

そう考えると骨董商という商売が成り立つ理由も分かるような気がする。

著者は「開運なんでも鑑定団」レギュラーの骨董商、骨董鑑定家である。本書は、骨董品の世界というものがどういう世界であるかを知るには格好の一冊といえるだろう。中々の名文家でもあるようで、骨董商売というなんとも人間臭く（ある意味インチキ臭い）世界を描きながらその文章は嫌味が無い。

養父のもとでの骨董商としての修業時代から、いかにして骨董知識を得てきたか、骨董世界における人間関係から、著者自身の生い立ちといった幅広いエッセー、それに写真入での骨董の名品紹介など、骨董の世界を覗くには好適な一冊といえる。