マグロはおもしろい　　　　北川貴士　　　　　講談社文庫　

幼稚園児に「好きなお魚は？」と聞くと、ダントツで一位はマグロだそうだ。幼い内から回転寿司で「トロ」「トロ」「イクラ」を食べて育つというのだから−−−。

世界のマグロ漁獲量の1/3は日本人が消費しているといわれ大人気のマグロだが、その素顔は意外と知られていない。

マグロ研究者の著者によるマグロの意外な素顔に関する薀蓄は豊富で面白い。

マグロは今年の初セリでも一尾5000万円もの値段がつき今や高級魚だが、戦争前までは寧ろ下魚であった。それはかつてマグロはシビと呼ばれておりこれが「死日」に通じるとして嫌がられたこともあるが、今好まれるトロなどの部位の脂の多さが昔の日本人の味覚に合わなかったことが主なる理由だという。

「マグロは高速で泳ぎ続けなければ呼吸ができなくて死ぬ」という俗説が、まったくの間違いであり、マグロは通常、時速4キロから8キロという人の歩く速度と同じ位の速度でゆっくり泳いでいることを著者等がバイオロギングによって突き止めたという話にはびっくりした。

マグロの太平洋大回遊の話、一度に卵を2500万粒も産むという話等々、本当に著者はマグロという魚を愛していることが行間からあふれ出ている。巻末にあるこれもお魚大好きの「さかなクン」とのお魚談義も面白い。