レーガン　　　　　村田晃嗣　　　　　　　中公新書　　

レーガンが70歳という高齢で大統領に就任した当時、そして二期8年の任期を全うし78歳でホワイトハウスを去るまで、彼は常に「ハリウッドB級映画俳優上がりで単純な素人政治家」という人々の印象から逃れることはできなかった。

しかし、そのレーガンが2001年のギャラップ調査では「アメリカの歴史の中で最も偉大な大統領」に選ばれたというのだからレーガンの時代を生きたタカさんにとっては、彼の業績がなぜこのように大きな変化を見せたのか大いに興味のあるところだ。

本書は、レーガンの時代と自らの青春の時期がダブるという著者による「日本ではじめてのレーガン評伝」だという。

新書一冊に、レーガンの生誕からそのアルツハイマーを患って4年間の昏睡の後の死去まで、そして彼の人格形成に影響を与えた父母をはじめとする家庭環境、アナウンサー、俳優、そして俳優組合委員長としてのキャリアー、二度の結婚生活など、実にコンパクトに纏められている。

ただ、そういった人間レーガンの部分にページを割いた分だけ、レーガンが大統領として残した業績（東西冷戦の終結）などに触れる部分、あるいは小さな政府を追及しながらその任期中に政府の財政赤字を3倍にも増やし、それ以降のアメリカ経済が苦しむことになった「双子の赤字」を生んでしまったことなどに関する分析が少ない点はいささか残念である。

評伝であれば、著者のスタンスとしては中立であることが望ましい訳だが、本書の場合、著者のレーガンに対する評価は中立よりはいささか批判的、というよりは著者はどちらかというとレーガンが嫌いなのではないかと思わせるところが何故か感じられて「評伝」とは言いがたいようにも思えるが−−−。

その意味では「レーガンの評伝」というよりは、「レーガンの伝記」に近い一冊ともいえる訳で、著者による本格的な「レーガン政治の分析」といった類の研究書を次作として期待したい。