暴力団　　　　　溝口敦　　　　　　　新潮社　

山口組に関する物、あるいは「食肉の帝王」等の裏社会の実態に関する著作の多い著者による「最新暴力団事情」解説の一冊だ。

著者によれば、暴力団対策法の施行以来、取締り強化により全国22の指定暴力団はかなり追い詰められてきているという。

その反面、指定暴力団以外の暴走族あがりなどの不良集団である半グレ集団は勢力を維持しつつ益々凶悪化を遂げているという。

暴力団員は、上部組織に対して月々上納金を納めなければならない上に組織から抜けることがほぼ不可能だが、半グレ集団にはそのような上納制度も組織の縛りもない。今時の若い者がメリットのない、古い組織である暴力団に魅力を感じないのは当然だという。

本書ではそういった暴力団最新事情に加え、暴力団の定義、彼等は何で稼いでいるか、覚醒剤や野球賭博はどれ位儲かるのか、といった内部事情、そして暴力団が壊滅しては自分たちの仕事がなくなるからと取締りに本腰を入れる訳ではない警察との癒着問題、諸外国の暴力団組織と日本の暴力団の違い、といった点までを一冊にまとめてあり、これを読めば最新の裏社会事情に関して目から鱗の知識が得られる。

吉本興業の社長が、暴力団との交際によって芸能界引退に追い込まれた島田紳助の芸能界復帰を希望すると語ったように、日本社会の根底には暴力団組織の存在を許容する空気が漂っていることについても、筆者の論調は厳しいが−−−。

やはり、暴力団がいなくなるような社会になるにはまだまだ道は遠いようにも思う。

(11年9月発行)