人間とはどういう生物か　　　　石川幹人　　　　　ちくま新書　　　

スマホに「明日の天気は」と声で尋ねると「コンシェル機能」が働きその地点の明日の天気が表示されるという。

しかし、この機能は、スマホの中に実際にコンシェルジュがいて明日の天気や、近くの美味しいラーメン屋を調べてくれている訳ではないということを、スマホ利用者は知っている。

単に、音声を機能的に分析、解析しある一定の音声（例えば「明日の天気は」という空気の振動）に対する反応をプログラミングしているに過ぎないのだ。

すなわち、機械が人の言葉に含まれる「意味」を人間並みに理解することは将来的にも無理なのではないかと思われる由縁であり、そこが人間と機械の違いなのだと著者はいう。

コンピューター知能研究に携わった経験をもとに人口知能の限界から逆に辿って人間とは何なのかを考察するという本書の試みは面白い。

人工知能の高度化と人間意識の進化とには何処に共通点があり、どこに相違点があるかを突き詰めていくことによって、人間意識とはそもそもどのような物なのかという考察に至れるのではないかという著者の筆は、「重ね合わせ」という摩訶不思議な状態を記述する量子論と人間意識の共通点へと飛躍していく。

まだ、認知されている理論ではないがといいながらも、この理論の可能性に言及する著者の意欲的思考は大いに応援したくなってくる。