底抜け合衆国　　　　町山智浩　　　　筑摩書房　

「世界は神が7日間で創造した」とか「人類の月面着陸は政府によるトリック（陰謀）に過ぎない」といった話を大真面目に信じているアメリカ人が大勢いると聞いて、アメリカってなんてバカな国なのだろう！と思う日本人はたくさんいると思う。

しかし、考えてみれば「なんてバカなんだろう」というのは別にアメリカばかりではない。

「ばら撒きはやります、財源はあるんです」というどう考えてもバカげた話を、大真面目に信じ政権交替をさせた有権者が大半だった国で、今国民が一斉に「騙された！」と叫んでいる姿も、外からみたら「バカな国」ということにならないだろうか。

ギリシャだってフランスだって「成長と財政再建」という二律背反を同時にやります！といっているポピュリズム政権が誕生したけれど、あれだって外からみれば「バカな国」ということになるだろう。

2000年から2004年までの四年間、アメリカに移り住んだ著者が現地で感じた、アメリカの「おバカ加減」を綴った軽口エッセーが本書だ。

ITバブルの崩壊、9.11のショックで右往左往する右から左までの陣営、マイケル　ムーアやシュワルツネッガーへのインタビューなどもあって、軽い読物として面白い。

ただし、多くのトピックはテレビや新聞、雑誌に掲載された記事などの二次資料を基にしているだけに、「週間テレビ番組評」のようなものばかりで鋭い社会批判といった深みはない。こんなおバカな国が世界を牛耳っていると思えば怖くもなるけれど、その一方ではこんなおバカがまかり通っているというのに世界一自由で豊かな国といわれるのだからアメリカって凄い国だ！とおもえなくもない。

冒頭述べたように自国のバカさ加減には全く言及せず、アメリカのバカさ加減を「上から目線」で叩きまわるという著者の視座そのものにあまり好意的な気分になれないだけに読んでいてあまり愉快な本ともいえない。（アメリカ人でもないのになぜそう感じるのだろう）