日本人の死生観を読む　　　　島薗進　　　　　　朝日新聞社　　　

人それぞれに「生」があるように、「死」もまた千差万別である以上、これこそがあるべき「死に方」だとか「死とはこう考えるべきだ」といったお手本がある訳ではない。

只、どうせ一度は体験するものであるなら、そのお手本を求めたくなるというのも至極当然といえば当然のことなのだが。

そういった死生観に関する書だと思って手にとった本書だが、正直言ってその期待は裏切られた。

著者が本書の中で度々、言い訳のように断ってはいるが、本書は、映画「おくりびと」あるいは、明治の武士道、宮沢賢治、柳田国男や折口信夫あるいは吉田満の高見順のなどの著作の中に著された「死」に関する考察を、抜書きしたものが主であり、まさに「死生観を‘読む'」という、ちょっとしただまし討ちのようなところがある。

もっとも「死生観」といっても「自分は死というものをどう捉えて、いかに臨むべきか」といった第一人称の死に関する論考と、第二人称、第三人称の死をどう捉えるべきかの論考では全く違うものになるように、「死生観」そのものの範疇は極めて広く、一言では言い切れないものであることを考えれば、これが「死生観」に関する決定版！などといわれる書物がある訳もなく、本書程度の物でも致し方ないか―――という気にもなるが。

結局、自らの死生観は、自らの生の中で探し出す以外にはないということなのかもしれない。（死生観を持つ理由は結局は「よりよく生きる為」なのかもしれないし）

（12年2月発行）