なぜ地球だけに陸と海があるのか　　　巽好幸　　　　　岩波書店　　　

宇宙創成時にできた天体すら観測できるようになった今でも我々自身の立つ地面の下の様子について我々が観測で知ることができる知識は極めて限られている。

そもそも、この地面の下は一体どうなっているのか、地球の最深部ではどのような物質がどのような状態で存在しているのか−−−。掘り下げたとしても精々数キロの地質サンプルを得るだけであって地球内部の謎は深まるばかりだ。

確かに、プレートテクトニクス、マントル、地殻、といった地球内部の様子についての多くが分かってきてはいる。但し、これらの知見も全て、地震波や噴出したマグマ、古い地層などから得られたデータを元に推論してきたものに過ぎず、まだまだ我々は地球について多くを知っているとはいいがたい。

本書がテーマとしているのは、地球、最大の謎、地球だけがなぜ他の惑星と違って海と陸があるかということだ。

地球科学研究の第一人者である著者はこの問題をテーマに最新の地球科学の知見を駆使して、「地球の大陸はどのようにしてできたか」という問題を詳細に語ってくれる。

「水の惑星」と言われる地球に大陸ができるメカニズムは、地球の表層を覆ういくつかのプレート（地殻とマントルの一部が一緒になったもの）、特に海洋プレートが火山にそった海溝からマントルへと沈み込む過程で安山岩質のマグマを生成し、この安山岩質のマグマによって大陸地殻が生成されるという循環によって徐々に大陸が巨大化していくのだという一連の地球ダイナミズムは、（はじめて聞いた話ではあるが）妙に納得できるものだ。

(12年3月発行)