ポアンカレ予想　　　   　ジョウジ・G・スピーロ　　　　　早川書房　　　

ポアンカレが提示してから100年間、数多くの数学者が生涯をかけて挑戦しながらも解くことができなかったトポロジー（位相幾何学）の超難問、「ポアンカレ予想」が、ロシアの数学者ペレルマンによって遂に解かれた。

そもそもポアンカレ予想とはどのような物なのか、その解決に挑戦した人々の思考のみならず、その生涯はいかなるものであったのか、遂にこの問題を解決したペレルマンとはいかなる人物で、彼のポアンカレ予想への回答はいかなるものであったのか。

数学者はもちろんのこと、数学に興味のある人、いや数学には興味はさほどないにせよ数学の歴史、あるいは数学者の生き方といったことに興味がある人なら本書は十分に楽しむことができるだろう。

一年ほど前だったか、NHKがこのポアンカレ予想とその解決の歴史を主題にした番組を放送したが、この難問解決に賭けられていた100万ドルの賞金も、あるいは数学界最高の栄誉であるフィールズ賞ですら辞退し、人前に姿を現さず隠遁してしまったペレルマンの奇行、あるいはこのポアンカレ予想解決の手柄を横取りしようとした超有名な数学者の愚行等々、本書ではNHK番組がカバーしきれなかった情報が満載で実に興味深いものだ。

「異なる次元における幾何図形をいかに投影するか」を考えるというトポロジーなる数学、その概略だけでもつかめたような気がするだけで、妙に満足感も得られるし―――。

お勧めの一冊だ。

(11年4月発行)