「誤解」の日本史　　　　　井沢元彦　　　　　　PHP文庫　　　

「逆説の日本史」などの著作で従来の日本史解釈に対して様々な異説を唱えている著者による15の日本史異説集が本書だ。

年功序列により先学の批判をしない、あるいは資料（権力者による歴史文献は、自分たちの勢力にとって都合の悪いことは書かない）妄信主義に陥ってしまっている、といった論争を許さない歴史学界的体質に抗する著者の本職は推理作家だから、確かに学界とは利害もなくこういった異説は言いたい放題！という有利（？）な立場にはある。

そんな訳で、著者による歯に衣きせぬ「異説」は、既存の権威に対する鋭い批判の舌鋒をともなっていて時には痛快だし、かなり説得力もある。

例えば、著者は、日本書紀の記述もあくまでも権力闘争に勝った側によって書かれている以上は「日本書紀に書かれているから〜」といって鵜呑みにすべきではないという。すなわち、「あなたは、企業の創業者が身内に書かせた社史を頭から信用しますか？」という訳だ。