宇宙の謎　　　　ポール・マーディン　　　　　岩波書店　　　

25000年前の人類は(勿論）既に月の規則的な満ち欠け、あるいは他の星々とは異なった動きをする惑星の存在を知っていた。

しかし、プトレマイオスが地球中心説を唱えて以降、15世紀コペルニクスあるいはガリレオが自作の望遠鏡を金星に向けてその衛星を発見するまでの約2000年間は、人類は宇宙の中心には地球があると考えていたのだ。

地動説が人々に認められるようになるまでの長い期間、そしてそれ以降、宇宙の謎が次々に解き明かされてきた歴史は、まさに人類の叡智の歴史であり誇らしい思いで振り返ることができる。

本書は人類史に残る宇宙天文学発展の歴史を65のトピックに集約し、それぞれの発見に携わった科学者たちのエピソード、あるいはその発見の真の意味などについて、写真や図版を交えて伝えるもので、大型百科事典サイズでありながら実に読み易い一冊だ。

大部な事典といった趣から、初心者向けであるかのような分かり易い記述であるにもかかわらず、本書がカバーするのは最新の宇宙論、ダークマター、ダークエネルギー、あるいは重力波などにも及んでおり、決して初心者レベルという訳ではない。

「宇宙百科事典」といった感覚で座右においておきたい一冊である。