重力とは何か　　　　　大栗博司　　　　　　幻冬舎新書　

世界レベルの物理学者である著者が「理科系以外に進んだけれど依然好奇心旺盛な高校時代の同級生」を対象として書いたという本書だが、そもそも重力とはいかなる力であるかから説き起こし、アインシュタインの相対性理論、量子力学から宇宙は十次元であるとする超弦理論からホログラフィー原理に至る現代物理学の最新知識を数式を一切使うことなく平易に解説してくれるという正に科学好きの文系人間にとってはありがたい一冊である。

聞きかじりの知識を消化不良のままにして何か分かったような気になっていた自分の知識が、いかにいい加減なものであったのかとあらためて思い知らされると同時に、「なるほど、相対性理論にしても量子力学、超弦理論にしても、本当はこういう意味だったのか！」と、いままでもやもやしていた地平が本書によって一気に開けたように思えた。

例えば、大型ハドロン型加速器で調べるとなぜヒッグス粒子の実在が確認できるのか−−−今までその理屈がよく分かっていなかったけれど、本書を読んで「なるほど〜」と一気に納得できた。

その他、「プランク長さ」（5.39121秒の10⁴⁴の1) の意味するもの、あるいは極小の世界を突き詰めていけば、そこに何があるのか―――といった問題の答え、ブラックホールに投げ込まれた情報の行方等々、宇宙論や宇宙物理学などの読書の際には、本書を辞書代わりに座右においておけば理解が大幅に深まるだろうと思える。