高校数学でわかるシュレディンガー方程式　　　竹内淳　　　講談社　

「かちっとした」体系で記述されるニュートン力学は一応「きまじめに」取組めば、納得できるし、アインシュタインの一般相対性理論にしても確かにニュートン力学からみればかなり風変わりではあるが、「まじめに」順を追って理解しようとすればどうにか受け入れることができる。

しかし、「半分生きていて、半分死んでいる猫」という「シュレディンガーの猫」だの、「飛び飛びの値をとるエネルギー」などといった我々が目にしている世界の法則とは全くことなる法則を持ち出す「量子力学」になるとその真の意味を理解することができず、「でも、ミクロの世界を語るにはこの理論しかないというなら―――無理やり納得するしかない」と不得要領のままでこの種の本を読んでいくしかなかった。

そんな訳で、｢高校数学でわかる｣とい本書のタイトルに一も二もなく飛びついた次第。

著者は、量子力学を本当に理解するためにはシュレディンガー方程式が何意味する方程式であるかを知り、実際にその方程式を解いてみればよいし、シュレディンガー方程式の根本のところは「高校数学」で十分だという。

本書では、量子論とはそもそもいかなるものかという初歩からはじめ、手取り足取り、平易な説明によって論をすすめてくれるだけに、いままで曖昧模糊としていた量子力学への理解が大幅に進むことは間違いない。

もっとも、本書でいうところの「高校数学」とは、基本的には微積分の知識と演算能力のことであるから、「高校数学」を離れて久しい人にとっては本書で展開される、シュレディンガー方程式の解析的解法の具体的演習はちょっときついものがあるかもしれないが、そこまでいかなくとも、解法演習の後追いをすることによってシュレディンガーが主張した「量子の世界」が実はニュートン力学やアインシュタインの相対性理論同様に「かちっとした」理論であることを体感することができるだろう。

量子力学に関する本は随分読んできたと思うが、なぜ本書のようなアプローチで分かり易く語った本がなかったのか―――コロンブスの卵のような話ではあるが―――却って不思議に思えてくる。