ゼロと無限 素数と暗号　　ニュートン編集部　　　ニュートンプレス　

科学雑誌「ニュートン」が別冊として時折発行する「ニュートンムック　別冊」はあるテーマを丸ごと一冊で追いかけるもので、ニュートンの特徴である豊富な図版、初心者にも分かり易い平易な解説、等もあって愛読しているが、本書もその特質をいかんなく発揮したお勧めの一冊である。

本書で取り上げられているのは「数」に関する不思議、その中でも数多くの数学者達が何世紀にも亘って挑戦しながらも未だに難問として残る問題、すなわち「ゼロ」「無限」そして「素数」である。

先ずゼロである。そもそもゼロは数なのだろうか。多くの古代文明はそれぞれの数学を持っていたが、ゼロの概念をもたなかった。ゼロを発見（発明？）したのは古代インド文化だがこのゼロの概念があるからこそ現代の数学は成り立っているとさえいえる。(微積分においてゼロの概念は不可欠だ)

宇宙にはゼロが溢れている。しかし、そもそも、光子は「質量ゼロ」といわれるが、質量ゼロのものが「存在している｣とは一体どういう意味なのか――？光速で移動すると時間がゼロになる――とは一体どういう意味なのか――？　溢れているにもかかわらず我々はゼロの本質を理解しているとはいい難い。

そして次に無限である。ゼロや無限（∞）を使った四則演算とはどういう意味であり、なぜ禁則とされたものがあるのか―――数学（いや算数）を学びはじめた頃には習いながらも、今や意味が曖昧になっている無限やゼロの概念のおさらいから、｢無限小から無限大｣の意味するものは――という話まで興味のつきない話題ばかりだ。

さらには「素数」である。その出現の法則は未だに発見されていないが、古代から人々を悩ませてきた素数の物語、そして素数に関するリーマン予想とはいかなるものであるか、素数を使った我々が日常使っているRSA暗号の仕組みはどのようなものか、といった点まで、いずれの項目も興味の尽きない問題ばかりだ。

座右において百科事典代わりに時々は、めくってみたくなる一冊だ。