宇宙に外側はあるか　　　　　松原隆彦　　　　光文社新書　　　　　　

人類の宇宙に対する知識は幾度かの大きな転換期があった。

天動説から地動説、そしてニュートン力学の登場、相対性理論、量子論の誕生、あるいはビッグバン理論、素粒子理論の発展等々だが、今現在も後の世には「あの時が、宇宙論の大きな転換期だった」といわれる時代なのかもしれない。

ハイゼンベルグの不確定性原理は、決定論（確定論）的な物の考え方というそれまでの常識に大きな変革をせまるものであり、その考え方に基づく量子力学は、未来は決定論的には決まらず、常に確率的であると主張し、この理論が実際に起こっていることが明らかになるにつれ、人類はまったくの混沌の中にほうりだされてしまった感がある。

この確率論的世界をどうにか解釈しようとする中で、多次元世界、ひも理論が生まれ、その行き着く先はマルチバースにまで展開しはじめた。

この宇宙に果て、はじまり、終わり、があるのかという問題だけでも、「宇宙論は余りに遠くに来すぎてしまったのではないか」とすら考えてしまう我々、素人の科学ファンにとっては荷が重過ぎるというのに―――多次元世界、ひも理論、M-理論となるとToo Much!だというのに、更にその先にあるというマルチバース理論となると−−−。

我々の宇宙の他にも幾つもの宇宙があるかもしれないし、しかもそういったマルチバースは今まで幾度も生まれ、又、今も生まれているかもしれない−−−というのだから、いかに理論的な説明を加えられても、中々、納得できるものではない。

まるで、地動説を聞かされた中世のキリスト教徒たちと同じ状況といえるかもしれない。

そんな現代にいて戸惑う人たちにまさにぴったりといえるのが本書かもしれない。

今現在宇宙論においては、何がわかっていて、何がわかっていないのか、という全体像の解説からはじまり、宇宙の始まり、宇宙の形といった現代宇宙論が解き明かした事実、そしてそれらの理論から浮かび上がってきたダークマター、ダークエネルギーといった新たな謎、そしてその謎解明のヒントとして浮かび上がってきた、多次元世界、マルチバース理論といった具合に、現状の宇宙論の全体像を解説してくれる一冊だ。