現代素粒子物語　　　　　　中嶋彰　　　　　講談社　　　　　

欧州原子核研究機構（CERN）が運営する大型ハドロン型衝突器（LHC）の実験によって物理学の「標準理論」の正しさを証明する最後のピースである「神の素粒子」ヒッグス粒子が発見された、と発表されたのは今年7月はじめのことである。

にわかにヒッグス粒子とは何か、その発見によってなぜ「標準理論の正しさが証明された」といえるのか等々の種々の疑問が、素人物理学愛好家にわきあがったものだが（そういう意味では、タカさんはこういった科学的な話題においては、みーちゃんはーちゃん的である）、発見のニュースのわずか2週間前に発行された本書は、そういった素粒子に係わる疑問を易しく解説してくれる実にタイムリーな一冊だ。（但し、本書の中では、ヒッグス粒子はまだ発見されていないことになっており、その点では超フレッシュという訳ではないが）

「99％以上の確率でヒッグス粒子が確認された」というのと「98.5％の確率で−−−」というのとでは、なぜ「雲泥の差」があるといえるのか、そもそも空間に充満していると思われるのに何物にも反応しないと思われているヒッグス粒子をどうやって「確認」するのか―――LHCの実験に至るまでの科学理論発展史、国際技術競争の現場の物語等々、ヒッグス粒子発見をキーにした素粒子物語は、実に楽しい物語でもある。

尚、「標準理論」の詳しい解説の中で度々揚げられている、南部陽一郎博士の偉大さに同じ日本人として（既に彼はアメリカに帰化しているが）あらためて誇りに思う。