専門家の予測はサルにも劣る　　　ダン・ガードナー　　　　　飛鳥新社　　　

世の中には「予報」「予測」が溢れている。

毎時といってよいほどの頻度でくりかえされる天気予報、株価予測、為替予測などの経済予測から、現在の人口統計という確たる数字を基にして行われる人口動態予測等々から、ノストラダムス、トインビーなどの未来予測に、占いの類、かぞえあげたらきりがないが、その予測の的中率（精度）たるや、いずれもサルがでたらめにコインを投げたのと同じか、それにも劣るという。

著者は、それでもなぜ人々は「予測」を聞きたがるのか、どれほど「予測」は外れているのか、なぜ専門家は自分の予測が外れてもその事実をみとめようとしないのか―――といった「予測」に係わる数々の疑問に関して、具体的実例を挙げ、心理的、社会的な考察を加えていく。

「こんなに予測ははずれている！」とあげつらって嗤うだけではなく、なぜ予測ははずれるのか、そしてそんなに当てにならない予測になぜ人々は頼ろうとするのか−−−といった点をあらゆる方面から検証していくという著者のアプローチには大いに好感が持てるし、実におもしろい。

マルクスにしてもウェーバー、トインビーからP・ケネディー、ドラッガーに至るまで、大いなる権威をもって予測を説き、その予測が見事にはずれたにも係わらず今でも大きな尊敬を得ている「予測の大家」は多い。

なぜ、そんなことがおき得るのか―――著者が指摘するのは、彼等に備わったある種、詐欺師にも通じる、予想屋としての特質（自信、大声、肩書といった）こそがそういった予想屋ビジネスの要諦だという。

確かに、公営競馬場の予想屋のおっさんたち（大声で自信たっぷりに予想し、外れたとしても、なるべくそれに触れないだけの図太さがある）を思い浮かべると天気予報のお姉さんや、マルクスとかなり共通点がある（というかそっくりだ）とも思えてきた。