次元とはなにか　　　矢沢潔/新海裕美子/H･ホライス　　ソフトバンク　

三次元空間に時間というもう一次元を加えた四次元空間(時空)に生きている我々が果たして五次元以上の多次元空間をイメージすることができるのだろうか。

どんな説明を読んでもイメージすることができないのは、自分に数学的な能力がないからではないか―――とも思うのだが、よくよく読んでみると多次元空間を説く様々な説も、その根拠の多くは、「数式からは多次元空間の存在を認めた方がより辻褄が合う」とか「3次元を2次元に、2次元を1次元に投影できるのだから、3次元にも4次元、あるいは多次元の投影があるはずだ」といったはなはだ曖昧な（数学者にとっては曖昧ではないのかもしれないが）根拠に基づくものであることからすると、素人は「要するに多次元の存在は従来の科学的方法では立証できない、すなわちひょっとしたら単なる幻想ではないだろうか」とすら思えてくる。

本書は3人の科学ライターの共著だが、多次元世界をどのように考えたらよいのか、次元論の最先端といった今もっともフレッシュな課題について数式などを一切つかわずに解説しており、次元に関するもやもやの解消とまではいかないが、それなりになんとなく分かったような気分にさせてくれる一冊だ。

実証科学の進展にともなってこの宇宙の謎は解明に向かうどころか益々深まっているが、そういった最新の宇宙論において‘オッカムの剃刀'的にばっさりとこれらの謎を解く鍵としてしばしば登場するのが、多次元そして余剰次元だが、この辺りの事情についても本書の解説は中々親切だ。