銀行員のキミョーな世界　　　　　津田倫男　　　　　中公新書

都市銀行、外資系投資銀行などで20年間の銀行員経験を積んだ著者による銀行員の内幕話。但し、著者が銀行員を辞めてから少し時間が経っており、その間における銀行を取り巻く環境の大きな変化などもあるだけに、著者自身、「今現在の銀行員はこうだ！」と力説できる自信をいささか欠いているような言い回しが多く、「確かに、昔はそうだったかもしれないが、今もそうとは限らないのでは−−−」と本書の内容に今一つ信頼がおけないような気がするところは気がかかりではあるが。

銀行員といえば「石部金吉」「謹厳実直」などというお堅いイメージとともに、「慇懃無礼」「雨が降り出すと貸した傘を取り上げる」等々、随分ネガティブなイメージもある。

それでいながら高給を食み、一生安泰なほどの恵まれた福利厚生に保護されており、潰れることもない等々の恵まれた待遇から一般からはやっかみ混じりの怨嗟の的にもなりやすい銀行員だが、銀行員の世界といえども一般企業同様、あるいはそれ以上に過酷な世界でもあるという。

そもそも、出世するかしないかは入社5年、2店目が終わるまでで決まり、一度低い評価が付くと挽回の余地は皆無、早ければ40代から、片道切符で銀行から出され、60台まで残れるのはほんの一握りの役員と、一生ヒラの行員だけという過酷な世界だとか。

いかに豪華な福利厚生施設があってもプライベートな時間が全くないセブンイレブンといわれる勤務実態、顧客に目を向けるのではなく常に上司と本部人事の方を向いて仕事をせざるを得ない行内人事システム。

「銀行を愛するが故に書いた」と断りつつも、銀行員、銀行システムの非人間的部分を次々と糾弾（暴露）するという内容は、確かに銀行の実態をよく表しているのではあろうが、読んでいて余り愉快な一冊という訳にはいかない。