細菌が世界を支配する　　アン・マクズラック　　　　白揚社　　　

細菌と聞けばどうしても病原菌だとか不衛生なところで繁殖するばい菌をイメージしてしまうが（アンパンマンのサブキャラクターであるバイキンマンは、いつも悪さばかりしている）本書によれば、人体にとって有害な細菌は、ほんの一握り、実際は人体にとって無害なものがほとんどであり、腸内細菌や皮膚につく常在細菌のように人間にとってなくてはならない有益な細菌が実に多いという。ヒトの皮膚や腸にいる細菌だけでも、ヒトの細胞の10倍以上だというのだから驚きだ。

細菌という驚くべき生命はこの地球でもっとも古い岩石といわれる38億年前の岩石にもその痕跡があり、現在でも地球上のありとあらゆるところ、上空数千メートルの大気中や地底深く、あるいは深海底や数百度の高温水の中などあらゆる所に住んでいるというのだ。微小で目立ちこそしないが、地上最古で最強、しかも最大数を誇る生物であり、その総数は10の30乗というとてつもない数に上るという。

本書は、我々のもっとも身近にいて、我々にとって不可欠な存在でありながら、意外と知られていない細菌に関する百科事典的な一冊であり、知らなかったことばかりが次々と出てくるだけに一気に読み進めることができる。

石油などの化石燃料の生成は、細菌なしではありえないこと、病原菌と抗生物質の飽くなき戦い（著者は最終的には細菌の完全勝利で終わるだろうという）、遺伝子組み換えに於ける細菌の重要性等々、細菌という生命の偉大さに言葉もないほど驚かされた。