アリの目日記　　　　　栗林慧　　　　　　平凡社　　　

病院で用いる内視鏡カメラを改造した特殊な接写用レンズで捉えた地上わずか3�oから見た世界は、まさにタイトル通りのアリの目から見た世界だ。そんな、驚きの目で捉えた映像は美しく、又、なんとも不思議な世界である。

小さなレンズを使って接写した小さな昆虫や花の写真だと、どうしても背景のピントはずれてしまい写り込まないが、本書の写真では背景にもしっかりとピントがあっているから、花びらの回りを歩くアリの姿の背景に大きな木々、そしてその更に上に漂う雲、といった今まで想像でしかなかったアリの目線（多分、アリはこういう絵を見ている訳ではないと思うが)を実体感することができる。

接写で見たダンゴムシや、キリギリス、セミなどのまるで異世界の生物であるかのような姿に驚き、落ち葉の中に埋もれようとしているガの死骸に無常を感じるなど、美しく、面白く、そして哀しい写真集だ。