ランキングの罠　　　　　田村秀　　　　　　ちくま文庫　　

日本人ほどランキング好きな国民も珍しいようだ。

最近は外食にでかけようとすれば「XX地区の美味い店ランキング」などというものを調べてから出かけるということは日常茶飯だし、ベストセラーだからという理由で本やCDを選ぶこともままある上に、興行成績のよい映画ならまあ間違いなかろうと思って観に行くといったこともある。

いやいや、受験も、病院選びも、投資の際の判断も、ランキングに頼りきりとなると、個人の価値判断などというものは最早存在しないと言ってもよいかもしれない。

しかし、巷に溢れるランキングは本当にそんなに信用してよいものなのだろうか。

中には、日本の治安は中東のシリアより悪い、とか日本国債の信用度はアフリカのボツワナと同程度、などというランキングをみて「なんだかおかしいぞ」と思わなくなってしまっているとしたらこれも又問題だ。

日本で一番住み易い県は、皆北陸にあると聞いた時に、「住めば都」という意識のある人の多くは「そんなバカな」と思ったのではないだろうか。ランキングの基礎になっているデータは一体どうなっているのだろうか。東京よりも福井の方が住み易いとは−−−。

本書はそんなランキングの数々の裏事情を教えてくれる一冊だ。こういった裏事情は、我々が日常どうしても「ランキング」から離れられない以上は、基礎知識としてやはりある程度は知っておくべきではないだろうか。

金融危機も、元はといえば格付け会社によるサブプライムローンの高位格付(ランキング）に皆が騙されたからだったし、TOELFの英語力のランキングでは、日本はアジア30国の中では、27位でラオスより下位になるん理由は、日本では8万人が受験するのに、ラオスではエリートが数十人受けているだけ−−−という分母の違いを隠したインチキなランキング操作だったという事情を知れば、ランキング信奉に対するいささかの警告にはなるはずだ。

本書を読むことによって、「小学生から英語授業をすべきだ」「社内共通語として英語を使うべきだ」―――と言っているようなバカバカしさからは、少なくとも抜け出せるかもしれない。