采配　　　　落合博満　　　　　　　ダイヤモンド社　　　　　

現役選手としては、三冠王を3度達成、中日ドラゴンズの監督としては、04年の就任以来8年間全てAクラス、内4度のリーグ優勝、1度の日本シリーズ優勝という輝かしい数字を残した著者が10年ぶりに野球を語ったという一冊。

日本シリーズにおいて完全試合目前の山井から岩瀬への投手交代をはじめ、WBCやオリンピックでの選手囲い込み（？）などなにかと話題の多い監督としての行動、信念を「中日監督辞任の今だから語れる｣といったスタイルで明らかにする―――という野球ファンにとっては興味深い一冊だろう。

「オレ流」といわれる采配を通して著者が守ろうとしたのは、「個人事業主としての選手個人」であるということが繰り返し述べられ、野球選手もサラリーマンも、「生活者」としては変わらないし、そうであるならば、監督は企業の経営者、上司と変わらないはずだという「信念」は、それなりに感心させられる。

但し、プロ野球の監督は球団から勝つことを求められているのだから、その為に何をするかが第一に重要なのだという落合の監督としての信念はそれはそれで評価できるものの、余りにそればかりが目立ちすぎると「娯楽としての野球を楽しみたいと思っているファン」にとっては、どうしても「落合野球はつまらない」ということになってしまいがちだ。

全球団の監督が全て落合流の試合スタイルになったら――きっとプロ野球ファンは減るだろうなぁ〜ともおもったが。