卑弥呼は何を食べていたか　　　　　廣野卓　　　　　新潮社

三内丸山遺跡では、縄文の人々が食べていた栗や胡桃などの果実、穀類、貝類や魚などの骨が大量に出土していて、その食材の豊富さが現代の我々の食生活とさほど変わらないどころか、却って豊かであったようにさえ思えて驚かされる。

本書は、縄文時代から古墳時代までの古代、我々日本人の祖先たちがどのような食生活をおくっていたかを遺跡からの出土品、木簡、あるいは「魏志倭人伝」などの文献などから探ったもので、実に詳細で具体的な内容には著者の研究者としての驚くほどの誠実さが溢れているようでおおいに楽しめる上に、資料的にも貴重な一冊といえる。

列島の成り立ちからいって、古代の人々は豊富な海産物や果実、穀類などに恵まれていたこともあってさほど肉食を必要としていなかったであろうこととか、幸徳天皇の時代にはチーズのような乳製品が食べられていたことなどの薀蓄に溢れることができるのも嬉しい。

卑弥呼の時代といえば3世紀だが、卑弥呼の食卓として再現されているものと、同時代のローマ帝国の人々が食べていたものとを比較してみれば、それぞれが遠い昔のそのころから「和食」と「洋食」の違いを必然的にもっていたことを知っておもわず笑ってしまった。