海はどうしてできたのか　　　藤岡換太郎　　　　　　講談社　　　

地球誕生以来46億年を一年間のカレンダー縮尺にするのが「地球カレンダー」というが、海の誕生は2月9日とかなり早い時期である。6550万年前の恐竜の絶滅は、12月26日という「つい最近」のことだというから海の誕生は実に古い時代に起きたということだと実感できる。

原初の海はどうやってできたか、その時の海の成分はどのようなものであったのか―――といったところからはじまり、太陽系で唯一という海の歴史、その海と生物の共生の歴史、そして未来において地球上の海がどうなってしまうのか―――をダイナミックに描いた一冊で、実に分かり易い。

その歴史の中には、繰り返し起こった気候の温暖化と寒冷化、超大陸の分裂と形成、生物の繁栄と絶滅が、いかに海の生成と連動してきたか、あるいは海底の地形がいかに形成されているか、海水の地球規模での大循環といった出来事も描かれている。

生命は海で誕生した、海は生命の母である、とは知っていても、実は現在の海は、生物によって形成され又維持されてもいるのだということは知らなかっただけに、地球と海、そして生命のダイナミックな共生には心打たれる。

そんな海だが、将来的には失われてしまう運命にあるというシナリオが終章で描かれている。その宇宙規模のダイナミックな動きにも又、大いに興味を引かれた。