婚礼、葬礼、その他　　　　　津村紀久子　　　　　文春文庫　

連休を利用しての旅行の申し込みをしたばかりのOLのヨシノは、大学時代の友人である二人の結婚式のスピーチと二次会の幹事を頼まれた。

泣く泣く旅行をキャンセルし、スピーチの原稿をつくり二次会の景品を買い揃えるなどに奮闘するが、結婚式当日、携帯に会社の上司の父親が亡くなったとの知らせが入る。

結婚式にしても通夜にしても、呼び出されると断ることができないヨシノは、結婚式のスピーチと二次会幹事を、頼りない相方に押し付け、喪服に着替えて通夜の会場へ−−−。

一面識もない名前も知らない上司の父親の通夜の会場では、元校長だったという故人を巡ってその妻（上司の義理の母親）と、愛人二人の争いやら故人とは不仲だったその娘（上司の妻）と孫娘との言い争いに巻き込まれ、更には猛烈な空腹におそわれて−−−と実にひっちゃかめっちゃかな一日になる。

結婚と葬礼という人生の節目で振り回される主人公の一日をユーモラスに描きながら、そこに人生の哀しさと楽しさを浮かび上がらせるという一編は、芥川賞作家らしい軽妙な小編になっている。

歩行者と自転車が行き交う十字路で起きた事故を題材に、人と人が交差しながら紡ぐ人生を浮かび上がらせた「冷たい十字路」との二編がおさめられている。