ことばの発達の謎を解く　　　　今井むつみ　　　　　筑摩書房　　

人間にもっとも知能が近いといわれるチンパンジーだが、100近い単語とその絵を覚え照合することはできても、覚えた（と思われる）単語を、自分の意思を伝える手段として使うことはできないという。（バナナと言えばチンパンジーはバナナの絵を指差すことはできるが、「バナナが食べたい」とバナナの絵をしきりに指差す、といったことをする訳ではない）

チンパンジーには絶対にできないことを、なぜ人間の赤ちゃんはいとも簡単にできるようになるのだろうか。

認知科学、発達心理学の観点から子供が母国語を使いこなせるようになる過程を解説した本書は又、言語がこそが人間を人間たらしめた最大の機能であることを教えてくれる。

子供が言語能力を取得していく過程は、「発見」と「創造」そして「修正」の限りないサイクルであり、言語を自分のものにする王道は試行錯誤の繰り返しなのだという本書の指摘は、外国語をこれから学ぼうとする人たちにとっても貴重な示唆になるのではないだろうか。