世界を動かす海賊　　　　　竹田いさみ　　　　　筑摩書房　　　

貿易大国日本だが、その輸出入物流量の99.6％を担っているのが、海運である。日本は世界的にみても、第4位の海運大国として国際物流の多くを担っていることも忘れてはならない。

その国際物流にとっての、大きな問題になっているのが世界各地で起きる海賊問題であるが、特にエネルギーのほとんど全てを海外、特にソマリア近辺を通る航路、インド洋南部やホルムズ海峡航路に依存している日本にとっては、この海賊問題は深刻である。

本書は、この国際海賊問題を「学究的」に研究したもので、海賊達のインタビューとか、海賊遭遇体験談が載ったドキュメンタリータッチの書ではないところが、いささか拍子抜けでもあるものの、逆に、海賊達の使用機器（グラスボートや、GPS、中国ロシア製の自動小火器類等々）の統計数字、身代金の金額や授受方法、あるいはマネーロンダリングルートなどの、「学究的」（？）調査結果は、海賊の実態を赤裸々にうかびあがらせてもいる。

海賊の取り締まり状況、あるいは海賊根絶の為の方策といった点において余り述べられていないのが不満だが、実際、ソマリアを始め、国家事業(?)　として数万人が海賊に従事している破綻国家を解消しない限り、この問題はなくならないという現実をあらわしているのかもしれない。