新・現代アフリカ入門　　　　　勝又誠　　　　　岩波新書　　　　　

50年程前、西欧諸国による植民地支配を脱してアフリカに多くの独立国が誕生した。

あれから50年、希望に満ちて発足し、世界の人々からも大いに期待されたアフリカの自治だが、現状は一言で言えば、「失望」とさえいえるのではないだろうか。

独立運動を主導してきた多くのリーダーたちが各国の初代大統領となったが、旧支配者である白人アフリカーナたちとの権力闘争、部族間紛争といった問題もあってそれらの国家の多くは幾度も国内紛争に巻き込まれ大量虐殺といった事態を生み、あるいは指導者の能力不足、貧しい経済基盤の問題もあっていまだに大量の餓死者を生むなどの悲惨な状況にある。

又、かつての独立のリーダー、戦士たちの多くは独立後、その多くは独裁者となり、私利私欲の権化と化し暴君としてあるいは人民の富の簒奪者として君臨を続けた。

中には失脚したかつての独立の英雄も多いが、その失脚後の椅子を巡って、再び民衆をそっちのけにした内紛、権力闘争が起こり、血なまぐさい内戦の結果生まれた新政権が前政権以上の独裁政権となる−−−といった繰り返しは、アフリカは「最早絶望的」と思わせるものがある。

今も、旧宗主国はアフリカからの資源や富の収奪に汲々としており、国際援助機関も、援助に名を借りて、アフリカの混乱を益々深めるだけだ。

一部には自らの力で新しいアフリカを作ろうとする動きもあるが、その力はアフリカが現在置かれた困難な状況に比べてあまりにも小さい。

著者は近現代アフリカ研究の立場から、近年、アフリカ各地で何が起きつつあるのか、なにが問題であるのかを提示している。

全てがフィールドワークに基づく研究という訳ではない点(勿論、一部には著者自身が現地で得た情報や感覚によってはいるが)、少々本書の迫力を弱めているようにも思うが、我々日本人がほとんど知ることもなく、また余り身近に感じることのない現代アフリカの政治状況、経済、社会の問題といったことを知るためには、貴重な一冊といえる。

「南北問題」と言われ続けた旧宗主国であった先進社会が、アフリカに及ぼした大きな傷が、未だ持って、全く癒えていないという現状を思う時、アフリカの不運が身に染みて理解できるように思った。