宇宙はこう考えられている　　　青野由利　　　　ちくま新書　　　　

｢素粒子標準理論の最後のワンピース｣などといわれたヒッグス粒子発見のニュースに湧いた昨年夏以降、そもそもヒッグス粒子とは何なのか、その発見が何を意味するのかに関する解説書が実に多く発表された。

本書もそんな中の1冊だが、その読み易さにおいては本書がトップクラスといえるだろう。

著者は女性サイエンスライターであり一般の主婦にも分かるように、という視点から書かれているというだけに難解な数式などは一切つかわず、しかもヒッグス粒子からはじまって、現在に至る宇宙物理学が到達した宇宙論、素粒子論などの広範囲をカバーしているだけに、宇宙論好きにとっての「ハンディーマニュアル」的な要素もある。

又、CERNにおけるヒッグス粒子発見現場の科学者や、多くのノーベル賞受賞者などに直接インタビューしての解説と言った面の配慮も、きわめてアップデートなものであって、まさに最先端科学記者ならではの仕事といえる。

又、男性優位の現場で研究に携わり多くの成果をあげている女性科学者たちの奮闘振りなども面白い。