生活保護リアル　　　　　　　みわよしこ　　　　日本評論社　　　　

生活保護受給者は現在約200万人、高齢者、母子家庭、傷病者、障害者などとその家族である。

決して多いとは言えないが、社会保障費の負担として国家財政を圧迫しているという事実、あるいは0.5％に満たないといわれる不正受給者の問題が、クローズアップされて報道されることもあってその現実に余り接することのない多くの人々は、｢生活保護バッシング｣ともいえる生活保護批判の声をあげがちだ。

本書は、自身も障害者である著者が、オンライン媒体に連載した生活保護受給者の実態レポート等を中心に纏められた一冊で、知っているようで知らない生活保護のリアルな状況を教えてくれる。

往々にして統計数字で表される生活保護者だが、本書ではその一人一人にインタビューすることによって、生活保護制度の問題点や論点を明らかにし、又、「自分とは関係ない」と思っている生活保護が、実は市井の普通の人々にも突然訪れる可能性のある「現代生活の陥穽」であるという実態を教えてくれる。

本書を読めば生活保護が、現代の社会生活において欠くことのできない必須ツールであるという事実に首肯できる人も多いのではないだろうか。

ただその一方、確かに、生活保護は「権利」であるという主張は正しいとは思うものの、「権利主張」のみを声高に叫んだ「年越派遣村」騒動、そういう声高に叫ぶ「弱者」に票ほしさに迎合するだけだった当時の民主党政権のあざとさを思い出す世論が、いまもどうしても生活保護に対して厳しい目つきになってしまうことが残念に思う。（貧困ビジネスに対する腹立ちが、生活保護や社会的弱者に対する腹立ちに繋がってしまっていないだろうか）