「AV女優」の社会学　　　　　鈴木涼美　　　　　　青土社　　

社会学とは、現実社会に生きる人々を対象としてその中からその人達の行動やその人が属する社会の構造についての「論理」を構成し検証していく学問である−−−といった定義があるようだが、要するに、社会学とは、人間行動に関することなら何を対象にしてもよく、その中から何か論理(言ってみれば理屈）を導き出せばよい、という随分と間口の広い、鷹揚な「学」である。

そういう社会学の枠組みからすれば、AV女優をその研究対象とし、彼女達の日常に密着し、時にはAV撮影現場のスタッフとしての活動もしながらの「研究」も立派な社会学であるということになる。

ルポライターの「ピンク現場密着取材」とか「AV女優裏話」といった雑誌のキワモノ取材と社会学の違いは、そこに、「AV女優は何故饒舌に自己を語るのか」とか、「労働としてのセックス」といった学問的論理が加えられているかどうかだということになるのだろうか―――。

AV女優と社会学が一体どう繋がるのかといささか迷いながら手にとった一冊だし、どうせAV女優といった特殊な人達の特殊な社会の裏話的なものだろうとおもった本書だが、読み進むにつれて、なるほどこれこそがAV女優を視点にした社会論なのだなぁ〜となんとなく納得がいった。

AV女優達が、自分達はエンターテイメント産業であって、フーゾクとは違う！という強烈な意識を持っていることなどがそれこそ「社会学」的視点で再三語られているところなど、なるほど、と感心もしたが―――まあ、なんでもあり、という「学」は範囲が広すぎる所為もあっていった外野の無関心にさらされる可能性は高いようにも思うが―――。